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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)10401号 判決 1981年2月24日

原告

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右指定代理人

石川達紘

外五名

被告

丸岡修

西川純

坂東國男

佐々本規夫

主文

一  被告らは原告に対し各自金一六億一八五〇万円及びこれに対する昭和五二年一〇月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を払え。

二  訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由

一原告は、主文同旨の判決を求め、別紙のとおり請求の原因を述べた。

二被告らは、公示送達による適式の呼出を受けたが、本件口頭弁論期日に出頭しない。

<証拠>によれば、原告主張の請求原因事実を認めることができる。

右の事実によれば、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して主文のとおり判決する。

(山田二郎 久保内卓亜 内田龍)

(別紙)

請求原因

一 被告らは、日本赤軍を名乗るものである。

二 被告らは、氏名不詳者一名と共謀して、昭和五二年九月二八日(日本時間。以下同じ。)、ボンベイ国際空港から偽名を用い、一般乗客を仮装してパリ発東京行南回り日本航空四七二便DC八―六二型機(乗員 機長高橋重男ほか一三名、乗客 成田厚子ほか一三六名)に乗り込み、右空港離陸後間もなく、右高橋ら乗員に対し、所携のけん銃あるいはナイフ、更には手りゆう弾様の物を示しながら、指示に従わないときは乗客の生命はない旨申し向け、同人らを抵抗不能の状態に陥れて同機を強取した上、同日午後二時三〇分ころ、同機をバングラディシュ人民共和国ダッカ国際空港に強制着陸させた。

三 被告らは、同空港に着陸した後、右乗員及び乗客を人質として同機内に監禁したまま、同空港管制塔から被告らとの交渉に応じた同国空軍参謀長アブドール・G・マームードを通じて、日本国政府に対し、本邦で未決勾留中又は受刑中の奥平純三ら九名の釈放引渡しと一〇〇米ドル紙幣による六〇〇万ドルの交付を要求し、右要求に応じないときは人質としている右乗員及び乗客を殺害する旨通告してきた。

四 右通告を受けた日本国政府は、人質となつている乗員及び乗客を救出するため、他に適当な方法がないところから、やむなく右要求を受け入れることとし、右金員については同月二九日の閣議において予備費から支出することを決定した。そして、同月三〇日、一般会計予備費から一六億一八五〇万円を支出し、一〇〇米ドル紙幣により六〇〇万ドル(同日の外国為替銀行対顧客米ドル電信売相場により一ドルにつき二六九円七五銭で換算)を調整した。

五 日本国政府は、同年一〇月一日、事件の解決を計るため、運輸政務次官石井一を団長とする政府救援代表団を現地のダッカに派遣したが、その際、同代表団に右六〇〇万ドルを携行させた。

六 現地に到着した同代表団は、被告らの指示に従い、同月二日午前零時五五分ころから同七時一五分ころまでの間前後三回にわたり、ダッカ国際空港に駐機中の前記日本航空機内において、被告らに対し、バングラディシュ人民共和国軍関係者を介して、人質の解放と交換に右六〇〇万ドルを各二〇〇万ドルに分割して交付した。

七 被告らは、右六〇〇万ドルを受領し、かつ先に本邦で勾留されあるいは受刑していた奥平純三ほか五名の引渡しを受けるや、同月三日未明、同機で同空港から離陸し、クウェイト・ダマスカスを経由してアルジェリア国に逃亡し、以後所在不明となつた。

八 以上のとおり、原告は、被告らの右不法行為により金一六億一八五〇万円の出捐を余儀なくされ、同額の損害を蒙つた。

九 よつて、原告は、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償金として金一六億一八五〇万円及びこれに対する不法行為の翌日である昭和五二年一〇月三日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

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